正直、前日の夜になって急に怖くなった。
それでも一度見たいと思っていたし、
一度は見なければならないと思った。

「合鴨の解体」

山田農場の一年、十二月。
今回は地域の皆さんで合鴨を捌き、その場で鍋にして頂くと言う企画だった。

山田農場さんは船橋の北端で無農薬・有機農業に取り組む農家。
僕はその農場と、農場に関わる地域の人を毎月追いかけている。
シリーズもこの十二月で9回目となる。

合鴨の解体。
見学だけでなく、体験させて頂けることになった。
経験できて心から良かったと思う。
自分なりに感じたことを記したい。

(当記事の注意として)
写真・言葉の選択には配慮したつもりですが、
「怖い」と感られる方もいるかもしれません。
あらかじめご了承ください。

タイトル
 
* * *

山田農場12月

この経験をする前。
魚は平気で捌けるのに、なぜ鳥だと怖いのだろう?
考えてみたが、明確な答えが出なかった。

しかし結果として、鳥か魚かの違いではなかったように思う。
「怖さ」は別のところにあったのではないかと。

山田農場の一年・六月(合鴨のヒナたち-2)

今日捌くのは6月に田んぼに放した合鴨。
あんなに小さかったのに、随分大きくなった。

お米を立派に守り、最後は食糧になってくれる。
とても働き者なのだ。

合鴨の会-3

合鴨の解体が始まった。
山田さんが合鴨を捕まえる。
参加者はそれを受け取り、逆さに吊るす。
鴨たちは驚くほど大人しい。

合鴨の会-6

(首の)頸動脈を包丁で切り、命を断(絶)つ。
この瞬間が一番つらかった。
「ごめんなさい」と目をつむりたくなった。

おっかなびっくりで包丁を引くから、なかなか切れなかった。
何度目かで「ぷつっ」という感触があり、つうっと血が滴り落ちた。

合鴨はまだ温かかった。
そしてやはり、彼らは大人しかった。

合鴨の会-7

血が抜けてしばらくしたら、熱湯にさらす。
これは羽と毛を抜けやすくするため。

合鴨の会-11

その後はひたすら羽を手でむしる。
一羽につき普通の人は1時間、慣れている人でも20分掛かると言う。
とても大変な作業。

水鳥は羽が多く、層になっている。
ニワトリなどと比べて羽を取るのに手間が掛かる。
必ず人の手が必要なのだそうだ。
(機械ではできないということ)

合鴨の会-13

そばで見ていた小さな子。
何を感じていたのだろう。

合鴨の会-15

そうして毛が抜けた合鴨。
いわゆる「丸鶏」の状態。
ここから捌いていく。

合鴨の会-16

もも肉、胸肉、手羽先、手羽元。
順番におろしていく。

ここまで来ると怖さは無かった。
食べるためには捌かなければならない。

そうか、この場所がこのお肉なんだ。
しっかりと理解することができた。

ササミがあのようについているなんて、
よくある「お肉の部位」の絵ではまず分からない。

仲良し兄弟-2

捌き終わってほっとした。
猫の兄弟が仲良しで、心がほころんだ。
肩の力がふっと抜けた。

合鴨の会-14

あとは合鴨を頂く。
農場で採れたたっぷりの野菜と一緒に。

合鴨の会-17

合鴨鍋。
調味料は醤油、酒、塩だけとシンプル。
鴨肉の美味しさが一番よく分かる味付けかもしれない。

合鴨の会-19

よそってよそって、

合鴨の会-20

いただきます。

皆さん、鍋を何杯もおかわりしていた。
食べられない、と言う人はいなかった。
子供も「おいしい」と言っていた。

合鴨の会-21

ご飯も鴨が一緒に作ってくれた「合鴨米」。
お米も鍋も漬物もサラダも。
ぜんぶ美味しかった。

* * *

食べるために生き物の命を断つ。
これは自分にとって少なからずショックであり、同時に貴重な経験になった。
普段手にする食材は、誰かがそのプロセスを(仕事として)行った後のものなのだ。

そして、お肉を食べるには非常に多くの手間を要する。
身を持って理解することができた。
これは山田さんが「今回知ってほしい」と仰っていたことでもある。

残さないこと。
食材を丁寧に扱うこと。
改めて心がけようと思った。

百聞は一見に如かず。
ほんと、そんな一日だった。

山田さん、農場の皆さん、そして合鴨たち。
ありがとうございました。