半年前。
中学の2コ上の先輩が日本画家として活躍していることを偶然知った。
その時すぐにwebを探し、問い合わせフォームから興奮気味にメッセージを送った。
「5月に船橋東武で個展をやるのでよければお越しください」という返事を頂いた。
4月になり、個展の案内ハガキが届いた。

そんなわけで。
ゴールデンウィーク中、先輩の個展に伺った。
ご本人にもお会いすることができた。

実に19年振りの再開。
当時は陸上部の先輩。
今は日本画家、綿引はるな氏。

* * * 

日本画家・綿引はるなさんと

船橋東武5階にて。
左が綿引さん。
着物がとても似合う。
自分は日焼けし過ぎて顔が上手く映らない。

「思ってた人で良かったです」 

綿引さんの第一声。
いくら部活が同じでも、一年生と三年生では余り交流がない。
だから記憶に薄くても仕方がない。
僕はお世話になっていたのでよく覚えている。

「こんなに小さかったよね」 

首元の辺りに手のひらを地面と水平にかざして先輩がおっしゃった。

140㎝そこそこで中学校に入ってきた自分。
小さいイメージが残っていたのだと思う。 
今も小柄ではあるが。

部活の先輩の話を少し。
世間話に近況報告。
緊張して、言葉がうまく出ない。 
気持ち、空気が薄い。

「日本画って初めて見た?」

初めてだった。
日本画がどういうものなのか全く知らなかった。 
富士山と荒波が思い浮かんだりもするが、それは別物。
そんな自分に綿引さんが日本画のことを教えてくださった。

* * * 

日本画とは「岩絵具(いわえのぐ)」で描かれた絵。
岩絵具…聞き慣れない単語。
これは自然界にある鉱石や宝石の原石など、石(岩)を砕いて作られた絵の具。
油絵の具や水彩絵の具とは全く違う。

(興味がふつふつ湧いてくる) 

孔雀石(wikipediaより)
(写真はwikipediaより) 

上の岩は孔雀石(くじゃくいし)。
とても綺麗なエメラルドグリーン。
こういった鉱物を砕いて絵の具ができる。

岩絵具は全て自然のものから作られる。
自然の色が絵になる。
日本人の素晴らしいところだと思った。
染め物などにも通じるように感じた。 

例えば同じ赤でもたくさんの種類の赤がある。
複雑な色合いが表現できるそうだ。
2色以上を混ぜたりせず、自然のままの色で絵を描いていく。

個展の様子

綿引さんの絵には身近な自然が描かれている。
苺、桃、藤、スズメ、フクロウ。
自然の材料で自然を描く。素敵だ。

会場に置いてあった雑誌に綿引さんのインタビューが載っていた。
その中にショッキングな言葉があった。

“自然の持つ生命力は写真には写らない”

自然の写真を撮るのが好きなだけに、ハッとさせられた。
確かにそうだ。
草花や木々、生き物の内側から漂う「生命力」を写真に収めることはできない。
写真ではのっぺりしてしまう。
綿引さんの日本画からは柔らかく温かい「生命力」が感じられた。
鳥の体温や植物の表情。あったと思う。

webでも作品が見られるが、やはり実際に見ると全く違う。
シロウト目にも素晴らしかった。

個展は本当は絵を買いたい人が来る場所。
展示会とは違う。
それでも僕は先輩に再会できて、日本画について少し知ることが出来て良かった。
一枚何十万円もする絵が売れていることにも驚いた。

芸術に関しては全く分からない。
しかし素晴らしい絵に触れ、たまには美術館にも行ってみたいなと思った。