出版社時代、四国の営業担当をしていた。
24歳くらいのとき。
年間100日以上、四国にいた。

四国4県どこも良いところだが、一番思い入れがあるのは徳島。
阿波踊りを見にプライベートでも行くほど好きだった。

また行きたい、徳島。
ちょっと考えだすと、当時をあれこれ思い出す。

* * *
 
飛行機で羽田から高松空港(香川)へ。 
社有車を引き取って高速で徳島に向かう。
四国の高速は絶対に渋滞しないから快適。 

書店さんと、時に一人で現地の小中学校を回る。
職員室や学年室で先生に教材の提案をする。
 
山の中。海のそば。
全校生徒が10人・20人という学校も少なくない。
そのような学校は職員室も小さく、雰囲気があたたかい。
石油ストーブの上で湯気を上げるヤカン。
すれ違う生徒さんの頬は、ほんのり赤かった。 

仕事で色々な場所を回れるというのは今考えればとても贅沢。
川をまたいで長く吊るされた鯉のぼり、風情のある港、山奥の食堂。
あの頃カメラが好きだったら、きっと仕事にならなかった。
自然いっぱい、人もあたたかい。

出張中はビジネスホテルに泊まる。
毎日ホテルを変えるのが面倒で、一週間同じホテルに連泊する。
スタッフさんとも顔なじみになる。

土日も東京に戻らず現地に滞在することが多々あった。
そんな時はホテルの食堂のおばちゃんがおにぎり弁当を作ってくれた(無料で)。
「これ持って遊びに行っておいで」、と。
あたたかいおにぎりを持って、知らない街を歩いた。
それでも時間が余ったから、喫茶店で本を読みふけった。

書店さん(お客さま)と深夜2時3時まで飲んでホテルに帰ってくることもあった。
ある日、飲み過ぎてフロントのテーブルで眠ってしまった。
受付のスタッフさんが声をかけてくれて、そこから仲良くなったりした。

向こうでのご飯は常に外食。
徳島の名物の一つに「徳島ラーメン」がある。
濃厚な醤油とんこつスープに甘辛い豚バラ肉、卵の黄身。
現地の人はこれをライスと食べる。
ほぼ炭水化物と脂肪。
健康的とは言えないのだけれど旨い。

色々な人に美味しいラーメン屋を聞いては訪ねた。
ガイドブックを買って、一軒一軒つぶしていった。
結果、ラーメンを食べ過ぎて外でラーメンを食べるのが好きではなくなってしまった。
そして今に至る。

* * *
 
徳島でお世話になった方々。
現地で出会った皆さん。

あれから7年にもなる。
今、その人たちは何をしているだろうか。

そんなことを考えながら徳島ラーメンを作ってみた。

徳島ラーメン

ぼーっとしていたら、肉が少し焦げた。
あのとき食べた味とは違う。
それでも懐かしい気分に浸るには十分だった。