用事を済ませていつもの道を歩いて帰る。
海神から夏見へ抜ける細道。

ふと、視線を感じた。
その先には一匹の猫がいた。 

クリーニング屋の店先。
気持ちよさそうに日なたぼっこをしている。 
その様子が愛らしく、写真を撮ることにした。

腰を落とし、猫の目線に。
ギリギリまで近づく。

クリーニング屋のねこ①
 
東の光を浴びるねこ。
目を細め、じっと日に当たっている。 

猫を飼ったことはないけれど、とても警戒心の強い動物だということは分かる。
(飼い主にはよく懐くようだ) 

一定以上の距離に近づくと、猫はサッと警戒態勢に入る。 

クリーニング屋のねこ②

「むっ、なんだこいつは。」

とでも言いたげに、左足を前に出してやや前かがみに。
少し離れると元に戻る。

その様が面白く、近づいたり離れたりしてみた。 
ねこにとっては迷惑な話だ。

数分間遊んだ。
カメラを持ったまま立ち上がる。 

いつの間にか隣に白髪のおじいさんが立っていた。
どうやらクリーニング屋の店主さんらしい。

「ねこ、好きなの?」 

尋ねられた。

動物の写真を撮るのが好きなんです。
可愛いですね。
(僕は写真を撮っているとよく話しかけられる)

おじいさんがねこの話をはじめた。
そうか、あなたも猫が好きなんだね―という感じで。

「野良猫なんだ。 
左の耳が切れてるでしょ?病気で手術したみたいだね。 
この子はメス。
もう一匹オスがいるんだけど、今はウチでご飯を食べてるよ。
食べ終わったらそっち(オス)も出てくるんじゃないかな。 
二人で仲良くでかけていくんだ。」 

おじいさんはこう付け加えた。

「ねこ、大事にしてあげてね。」 

猫が大好きなのだと思った。

1つだけ疑問が残った。

家の中でエサをあげてるって…
それは野良猫ではなく「飼ってる」んじゃ…。

どっちであっても、おじいさんの猫への愛は変わらないか。

そんなことを考えながらゆっくり歩いて帰った。