大学一年のとき、熊本へ行った。
友人の叔父さんを訪ねて。
その友人を交え、男3人の旅。
人生初九州。
熊本で衝撃的な出会いが2つあった。
一つは阿蘇山。
社会のテストで「カルデラ」と書かされたあの場所。

目の前いっぱいに広がるなだらかな斜面。
(実際はもっと岩がゴロゴロしていた)
雄大そのもの。
もう一つはある音楽。
友人の叔父さんの家へお邪魔すると、文字通り山のようにCDが積まれていた。
数百枚、千枚あったかもしれない。
叔父さんが何気なしに一枚を選んでかけた。
聴いたことのない外国の音楽だった。
それまで僕は音楽に全く興味が無かった。
小学校高学年にもなれば、周りの友達はJ-Popに興味を持ち出す。
ミスチル、B'z、スピッツ…
自分には何が良いのか分からなかった。
そのまま大学生になっていた。
どころがどうだろう。
今、流れている音楽にみるみる夢中になった。
一発でノックアウト。
叔父さんに尋ねると「エンヤ」というミュージシャンだった。
「Orinoco Flow」
一曲目だったと記憶している。
英語なんて全然聴き取れない。
何を言っているかも分からない。
しかし、リズムに乗って水のせせらぎが聴こえてくる気がした。
大きくゆったりと流れる川が思い浮かんだ。
すごい。
言葉関係なしで、音楽だけで情景が頭の中に描かれる。
透き通った声も素晴らしい。
たまたま選ばれた一枚のCD。
自分にとって大きな出会いになった。
* * *
東京へ戻ってスグにエンヤのCDを借りに行った。
何度聴いても良かった。
それから洋楽に興味を持ち始める。
他に思い浮かぶミュージシャンのCDを借りてみる。
The Beatles。
ビートルズがまた良かった。
たくさん出ていたCD、ほとんど聴いた。
何度リピートしても飽きない。
大学の授業と授業の間に時間が空くと、公園のベンチで寝そべって聴いた。
ビートルズが生きていた60年代の音楽に始まり、
とにかくイギリス音楽を貪るように聴いた時期があった。
60's Mod's、パンク、90年代のブリットポップ、最近の若いグループ。
イギリスは憧れの国に。
音楽雑誌に出ているミュージシャンの服装に惚れ込み、革ジャンを買ったりもした。
ウン万円という金額は大学生当時には相当な無理でもあった。
(現在でも大金だ)
* * *
20代の頃ほど音楽は聴かない。
新しいCDも滅多に買わない。
それでも家で一人だと何となく音楽をかける。
だいぶ捨ててしまったが、懐かしいものばかり。
音楽との出会いは「エンヤ」だった。
最近知ったのだが、エンヤはアイルランドの人らしい。
身内がアイルランドに長期留学した経験があったり、アイルランドの曲を好んで歌っていたり。
不思議な偶然のようにも思える。

もしあのときエンヤに出会っていなかったら…
音楽に興味を持つことは一生なかったかもしれない。
そうすると今、自分は違う状況にあったかもしれない。
どこで何に出会い、それが何につながるか。
本当に分からない。
面白いもんだ。
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