久しぶりに小説を読んだ。

田崎つくる

色彩を持たない多崎つくると 、彼の巡礼の年

発売から7日で100万部が刷られたというのだから、相当なもの。
既に読まれた方も多いと思う。

内容については「よかった」とだけ記したい。


村上春樹氏(以下、春樹氏)の作品が好きだ。
キッカケは前職の先輩が薦めてくださった
世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』。 
小さな文庫の中に、現実と空想の狭間のような世界が広がっていた。
本を閉じるのが惜しくすら感じられた。

『多崎つくる』でも、彼の「よさ」は健在だった。
言うもおこがましいが、やはり天才。

* *  *

村上春樹作品の好きなところ。
2つある。

①情景描写と世界観 

春樹氏の情景描写は気持ちが悪いほどのリアリズムを持つ。
手に取るように光景が浮かぶ。
音まで聴こえてくる。

空想の世界を書いていても、現実のように思えてくる。
村上春樹に引き込まれて行く。


②文章のリズム

「読む」と言うよりも、音楽を聴いている感覚に近い。
言葉が紡ぐ音。

一文一文が(比較的)短い。
詩のような印象も受ける。

多すぎず、少なすぎず。
余計な言葉が見つからない。
どれも彼の作品になくてはならない。 

人それぞれ声が違うように、
文章のリズムも一人ひとり異なる。

春樹氏のリズムはとても心地よい。

彼は作品は「書く」のではなく、深く掘り下げ、突き当たるものだと言う。
こんこんと湧き出てくる言葉。
それがリズムになる。

「読みやすい」「すっと入ってくる」

これらは文章のリズムによるものが大きい。

僕は書く上で、春樹氏の文章に少なからず影響を受けている。
マネではなく憧れ(とても真似などできない)。

* * *

●読書について 

最近は本をあまり読んでいない。
もちろん活字は好き。
週に一冊くらいは読みたいところ。

転職してからしばらく、貪るように本を読んだ。
二日に一冊。
経営、経済、心理、偉人伝…
いわゆる「ビジネス書」(僕はこのくくり方は好きではない)の類。
なんでも手にとった。

良書と呼ばれる本は確かにある。
読んだモノは恐らくどこかで自分の思考の一部になっている。 

ただ、ある日。 

書店に似たタイトルの本が余りに多く並ぶのを見て、ガッカリした記憶がある。
「売れるように書く」のだなと(商売である限り当然だが)。
焼き直しも多い。表現の仕方が違う。 


読んで(読んだだけで)満足している自分に気づいた。
賢くなった気がしていた。
仕事が増える気がした。

しかし。

答えは本の中には無い(何かのキッカケにはなるかもしれない)。
やはり試行錯誤しながら自分で見つけるしかない。
現実の世界で。ひとの中で。

それでも会話の話題が増えるのは良い。
体系的に物事を知るのには書物は優れている。
本を通じたコミュニケーションも素敵。

過信し過ぎちゃいけないな…それだけのこと。

やはり読書は好きだ。

* * *

今は様々なジャンルの本が読みたい。

小説、絵本、写真集、詩集。

音楽を耳を傾けるように。

色とりどりの表現、人生、考え、景色を感じられる。

そんな本が読みたい。

ゆっくりと。

リズムを味わうように。