「風の便り」

という言葉がある。 

“どこからともなく伝わってくる噂”の意味。

「風の便り」ってあるなと、しばしば感じる。


「え!なんで知ってるの!?」

そう驚くことが最近、少なくない。

知っているはずのない情報を目の前の相手が知っている。
 
いいこと、わるいことに関わらず。

「どこで聞いたの?」

尋ねてみても分からない。 

「どこかで聞いたんだよね」

それが風の便り。

どこかで誰かがつながっている。
風の便りは届いて行く。

知らないところで、知っている。

 * * *

六次の隔たり。

やや古い話だけれど、
“6人以上の人を介せば、全世界の人と(間接的に)つながっている。”
という仮説。

アマゾンの奥地とか、ヒマラヤの山奥とかどうなんだろう…
などと思うが、理屈としては面白い。

しかし「地域」「地元」と呼ばれるもっと限定的な範囲では、
6人も介することなく(間接的に)知り合い同士であるように感じる。

3人も介せば十分ではないか。

街で突然見知らぬ方に声をかけられたり、
ランニング中に自分を見かけたという方からFacebookでメッセージを頂いたり。
そんな時代。

世界は広い。
世間は狭い。

いつもどこかで誰かが見ている。
心しておいた方が良さそう。

でもそこに息苦しさは感じない。
その近さが好きだし、ものすごく助けられている。

* * *

ローカルなエリアにおいて、
風の便りの届くスピードは恐ろしく速い。
ネット云々より、顔を合わせるところにある。

手を離れた情報が、知らないところでみるみる広がっていく。

せっかくならば向かい風ではなく、追い風を受けたい。 

庭の桜
 
つい先日、春一番が北陸で吹いた。
思い込みとは知りながら、庭の桜の木の芽がわずかに膨らんでいるように見える。

これもまた、風の便り。