高校の陸上部の同級生が、高校の体育教師をしている。
その縁で、高校生(彼の教え子)と一緒に陸上の練習をさせてもらえることになった。

高校時代から変わらない男


まず、教師である同級生について書いておく。
彼は副部長で、僕は部長だった。
(同級生なら誰だか一発で分かると思う)

とても良い奴だった。
それは今でも変わらない。

彼は誰よりも十八年前と変わらない人だと思う。 
見た目も体型も変わらないし(筋肉で一回り大きくなったけど)、人柄もそのまんま。

陸上が好きなのも相変わらずだ。 
今も選手として活躍している。

こういった形で、また一緒に陸上に関われることが嬉しい。
走り続けると、やはりいいことがある。

市川市にある陸上競技場へ


同級生の勤める高校は市川市にある。
生徒さんたちは、近所の陸上競技場でよく練習しているそうだ。

陸上競技場

陸上競技場のトラックで練習するなんて14年ぶり。
最後は大学1年の時だった。

少し早く着いたので、ストレッチで暇つぶし。
ほどなく同級生と、生徒さんたちがやって来た。

「うわー、先生やってるなぁ」

彼を見た第一印象。
お互いに昔の感覚で接する。
しかしその空間には彼の教え子たちがいる。
生徒さんは自分らの子供でもおかしくない年頃。
不思議な感じがする。

一緒に走る長距離セクションの生徒さんは2人。
先輩に当たる子(A君)は、県大会に余裕で出られるタイムを持っている。
そんな子と今から走るのか...。

自分に甘い目標を立てるべからず


この日の練習メニューは12kmのペース走。
後半になるほど設定タイムが上がる(スピードアップしていく)。

「こりゃあキツイな(速すぎる)...」

正直、僕は思った。
自分が高校時代でもキツい。
A君も口には出さないが自信は無いようだった。

10kmまではA君についていこう。
自分の中で目標を決めた。
試合のつもりで気を引き締めて臨む。

半分までは楽に走れた。
日々のトレーニングの成果だと思いたい。

しかし、後の半分が苦しい。
一度離れたら、絶対に二度と追いつけない。

10kmまでは一緒に走れた。
だけれど、そこでホッとして離れてしまった。

「10kmまで頑張ればいいや」

心の中で自分を甘やかしたのがいけなかった。
「最後までA君に負けないぞ」という気持ちが大事だった。

大人のダメなところである。
ある程度経験があると、良くも悪くも自分と目標との距離をすぐに見定めてしまう。
つまり、諦めが早くなる。
「こりゃ無理っぽいな」と。

新卒の頃、先輩が教えてくれた。

「あー、もう無理!って場面を乗り切ることでレベルアップしていくんだよ」

全く、その通りだと思う。
もうダメだ、無理だ、と思った時に踏ん張る。
それが人間を成長させる。
精神的な意味でも。

小さなステップで一つずつ目標を達成して行くのも大事だ。
しかし、余裕で乗り越えられる目標では意味が無いと思う。

社会(仕事)においても、「もうひと踏ん張り」を「重ねる」が自分を高める。
そんな教訓を今さら、走ることから再認識した。

結局、A君に50m遅れてゴールした。
これは気持ちの差だと思う。

走り終わってA君が言った。

「こんなに良いタイムで練習で走れたのは初めてです。」

自分が少しでも役に立てたのかなと思うと、嬉しくなった。
こちらこそ、一緒に走ってくれてありがとう。


帰り道、江戸川の河川敷


楽しくも厳しい練習だった。
駅へ向かう足がガクガクした。

道の脇から土手が見えた。
そうだ、そばには江戸川が流れているんだ。

江戸川の河川敷-1

ジョギングするのに気持ちよさそうなコース。
海老川沿いも良いけど、ここも良い。

江戸川の河川敷-2

里見公園。
調べてみると桜の名所らしい。
お城もあって、一度行ってみようかな。

江戸川の河川敷-3

逆側には京成とJRの鉄橋が見えた。
はあ、疲れたなぁ。

33歳、まだまだ頑張れそう


あれ以来、トレーニングで苦しい時に思い出す。

「A君と走った時は、もっと速いペースだった。あの日できて今日できないことはないぞ」

そうしてもう少し頑張ってみる。

今後、特に大会に出る予定もない。
ただ日々、目いっぱい走りたい。

今のところ、まだタイムは伸びている。
33歳になって、どこまでやれるかチャレンジしたい。

また同級生にお願いして練習に参加させてもらおう。
次はA君に負けないつもりでいる。