「桜餅、いっしょに食べませんか?」

山田農場さんに着いて最初に頂いたのはそんな言葉。
伺ったとき、ちょうどお茶の時間だった。
手作りの桜餅は甘さ控えめで美味しかった。 

山田農場さんは船橋市の北の外れ、車方(くるまがた)町にある。
同世代の男性が無農薬・有機栽培で畑をやっていると聞き、話を伺ってみたいと思っていた。
紹介くださったのはアトリエ・イドのリハルさん。
山田さんへメールで見学のお願いしたところ、「いつでも来てください」との快いお返事。
思い切って訪ねてみたのだ。

山田勇一郎さん

こちらが山田農場の山田勇一郎さん。
船橋で初めて土地を借り、一から農業を始めた(新規就農)方。

お茶を飲み終えると、農場の中をご案内くださった。
想像以上に興味深い話がてんこ盛りだった。

山田農場さん全体

今回伺ったこの場所以外に5つの畑と田んぼをやっておられる。
一人でこれだけの量の畑の世話をするのは、もの凄く大変だろう。

山田農場さんは完全無農薬・有機栽培。
鶏糞などを使い、100種類もの野菜を育てる。 

山田さんの農業のキーワードは「循環」
エネルギーも栽培も、全てを自然のサイクルの中で完結させたいと話す。
例えば化学肥料を作るのには石油を燃やす必要がある。
石油の輸入が止まったら続けられなくなる。

野菜や米の配達も10㎞に限定。
店売りも基本的に行わない。
一つ、究極の地産地消と言えるのかもしれない。
(僕が分かったようなことを言うと陳腐に聞こえてしまうが)

「好きなことをやらせてもらってます。」

にこやかに話す山田さんは、農家でありながら研究者のようにも映る。 
畑を回りながら、色々なことを教わった。

温床

「これはウチの自慢の技術なんです。」 

ビニールハウスの中にある苗床。 
苗の下には「わら」がぎっしり敷かれていた。
わらが発酵するときの熱で40℃に保ち、苗を育てる「温床」という技術。 
本来は落葉を使う。
落葉がエネルギーになり、野山は綺麗になる。循環だ。
多くの農家では暖房を使っているそうだ。

麦を植えて害虫ブロック
 
スナップエンドウ(左)の隣に、あえて麦(右)を植えている。
麦についたアブラムシを食べに来たテントウムシが、エンドウのアブラムシも食べてくれる。
これも一つの循環の形。

 水菜の菜の花

水菜の花。
アブラナ科の植物には全て菜の花がつく。
菜の花は一種類だけだと思っていたら違うんだなぁ。

紙で出来たシート

畑の上に敷くシート。
普通は保温性が高く安価なビニールを使うところ、ここでは紙のシートを使用。
ビニールはゴミになるが、紙なら土に還るからというのが理由。

鶏小屋

ニワトリ小屋。のびのび走り回っている。

鶏のご飯

エサはおからと米ぬかを混ぜたもの。
化学的に栄養を増やしたエサを与えると産む卵の数は増えるが、ニワトリにとって負担になる。
一般的な養鶏場より産む数は少ないけれど、それが本来の姿なのだそうだ。 
人間だって、薬みたいなバランス食品より白い米の良い。
ニワトリも同じこと。 

ぐるっと農場を周り、もう少しお話を伺う。
船橋は一から農業を始めるのに敷居が高い街であること。
農産物のブランド化の光と影。
補助金の仕組み。
色々な視点があるのだと考えさせられた。

今回は妻も一緒に見学に連れてきた。
消費するだけではなく「つくる」ことにも興味を持って欲しかった。
何か感じてもらえただろうか。

山田さんと研修で来ていた女性にお礼を言い、農場を後にする。
これだけ書いてもまだまだ書き足りない気持ちでいる。
見学や体験も随時行っているとのこと。
ご興味のある方は連絡してみてください。
(山田農場メールアドレス opk001@hotmail.com ) 

山田農場さんの卵と人参をいただく

翌朝。
お土産で頂いた卵と人参を朝食に。
卵は赤いエサではなく白いエサで育っているため、黄身が白い。
白身にも「つるん」とした弾力がある。

山田さんとニワトリたちの顔を思い出しながら頂く。
ごちそうだなと思った。